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美学校のオンライン授業(ほぼトークイベント)「ひとびとのサブカル史」をとっていた。TVODという男性2人組のテキストユニットが講師で、ゲストを招いて青年期の人生史を読み解いていくというもの。


その最終回が昨日だった。ゲストは牧村憲一さん。タモリさんと同世代くらいの音楽プロデューサーで、フリッパーズや大瀧さんと仕事をしていた人。

そこで個人的に1番面白かったのが音楽の話でもなんでもなく、思想史的な話だった。

牧村さんは幼少期、朝鮮戦争の特需景気のおかげでそれまで金持ちのおやつだったバナナやチョコをふつうに食べれるようになった。食べ物を通して、身体的に、時代が豊かになったということを実感したという話だった。朝鮮戦争で、日本はアメリカに物的支援を行い、人を殺すことに加担していた、しかしそのおかげで日本社会は高度経済成長を遂げ、生活は豊かになっていった。

このような形で豊かになることを受け入れる自分と、ダメだと思う自分のアンビバレント的な感覚がものすごくあったと、言っていた。
ほかにも、アメリカはものすごく問題のある国だが、アメリカ映画の素晴らしさに抗うことはできない矛盾。

ただ牧村さんは、このアンビバレントで良いと語った。どっちかに偏って貫こうとするから、今のよつな右と左の分断が進んでいく。どちらかでなければいけないかのような風潮。正常、ふつうの思想というのが見えづらくなっている。と。

この牧村さんの話をTVODの2人が最大限理解して、コメントしてまた牧村さんにパスをして、みんな同じところで同意していたその言語のやりとりがとても心地よかったし、こういう場に一緒にいれてよかったと思った。うまく言えないが、、


そして、今現在のTwitterなどで分断されゆく思想の流れを見ていて、個人的にもどういう立場でいるべきか戸惑う場面が少なからずあった。SNS、特にTwitterには極右の人や極左の人が溢れていて、強い意見に流されそうになってしまう。自分の頭の中でも整理がつかない場面が多い。そこでいままでわたしは論点ごとに、左右に捉われず違う意見を持つことで、偏りから脱しようと試みていた。
しかし、今回牧村さんの言葉を聞いて、別に全ての論点に対して、どう思うかという意見を持たなければいけないなんてことは決してなくて、アンビバレントのままそれを自分で肯定してあげてもいいんだな、と思えた。これはすごい進歩だった。脳なのか心なのかわからないがスッとした。いわば救済を得た瞬間のようだった。

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