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QJの原稿、めちゃくちゃ短いやつなのに、全然書けなくて、よく考えたら最近全く本を読んでないことを思い出して、これは、本当に良くないことだと思った。
心が瀕死になっている。目の前の環境のことにばかり気を取られて、そこでの躁鬱以外に刺激がなかった。
心が空いてしにそうだ!ということにやっと自覚的になったわたしは、わらをもすがるおもいでブックオフに入り、いつものようにあらゆる一級の古典料理が並んでいることに安心し、メニューの説明を読むかのように裏表紙の解説を読み、品定めをし、三島の『夏子の冒険』、寺山の『ポケットに名言を』、川端の『愛する人たち』、谷崎の『刺青・秘密』、そして『アルケミスト』、わたしはたべたかったすべてのメニューを見つけ、とても満足した様子でレジに向かう。全部で1400円ほど。一級の作品が5品でこの値段。これはこの世の買い物でもっとも幸福かもしれない、と本気で思った。
とはいえ、私はこの5品を発見し、手に入れた、ということに満足してしまい、一口や二口、口をつけて、ああなんて美しいんだろうと思って、おしまいにするのである。おしまいにしても、それらは劣化しない。また同じように食べられる。
なんてったって、一口でも口をつけたら、溢れるように脳が文字になっていくから、それだけで十分なのであった。
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